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薩摩切子の輝き [美術館]

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鹿児島の尚古集成館を初めて訪れた時、特に衝撃を受けたのは、薩摩切子だった。
およそ150年前のガラスとは思えないほどの、その透明感には驚くばかりだった。

そして今、六本木のサントリー美術館で、”一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子”という展覧会が開催されている。
そして、ようやく時間の都合がつき、見ることが出来た。

この展覧会は、鹿児島で見ることのできる薩摩切子だけでなく、その起源や歴史に加え、海外へと輸出されたものも今回数点里帰りしており、多くの薩摩切子を一度に見ることができる点でも非常に貴重な機会だ。

そこで見た中で、特に感銘を受けた点をいくつかご紹介したいと思う。

No.112 薩摩切子 雛道具1式
篤姫所用と考えられているもの。元の大きさのおよそ1/3にも満たないような非常に小さなグラスや皿にも、非常に緻密なカットが施されている。ガラスだけでなく、装飾品にもしっかりと蒔絵がほどこされているところも驚きだ。

No.99 薩摩切子 藍色被船形鉢 1口
19世紀中ごろの製作とは思えない、高い透明感とやわらかな藍のビネットが美しい。本展覧会で一番衝撃を受けた作品の一つだ。

No.71 薩摩切子 緑青色被蓋物 1合
薩摩切子は色々と見てきたつもりだが、この奥深い緑の色被せは初めて見た。エメラルド色のようで、しかしまたそれとは違う、言葉には表しがたいとても素敵な色だった。

(上記のNo.は、展示作品のそれぞれのプレートに書かれた番号)

どのガラスも素晴らしく、思わず見とれてしまうのだが、器の美しさだけでなく、トップから当てられたライトが、これら切子を通して下に落とす影もこれまた美しかった。

薩摩切子は、島津斉彬の時代に隆盛を極めたが、斉彬の死後は急速に衰退してしまったという歴史を持つ。海外でも高い評価を受けていたこともあった薩摩切子の歴史が、わずかの短い間で終わってしまったことは、非常に残念なことであったが、その後”薩摩系切子”として流れを受け継ぐものも現れた。今回の展覧会でも、数多くの貴重な展示で歴史を知ることが出来たという点でも、非常に興味深いものであった。
また、ミュージアムショップで販売されていたカタログは、写真の質も高い上、資料的価値も非常に高いが、比較的リーズナブルな値段で、私も一冊購入した。(上の写真)

なお、現在は鹿児島において、薩摩ガラス工芸が薩摩切子の復元したものを製造、販売している会社もある。さらに当時は無かった新しい色(特に黄色)や、二色被せ等を創作切子として製作も行われている。

昔から、どうしてもひとつ欲しいと思っているが、その夢はまだかなっていない。
そして、その思いを更に強くするには十分過ぎるほどの、大変見ごたえのある素晴しい展覧会だった。

サントリー美術館 http://www.suntory.co.jp/sma/index.html
尚古集成館    http://www.shuseikan.jp/
薩摩ガラス工芸  http://www.satsumakiriko.co.jp/

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コメント 8

がぁこ

江戸切子っていうのは見たことがあるんですけど
薩摩切子っていうのもあるんですねぇ~
とても繊細で綺麗な色合いで素敵です(^-^*)
by がぁこ (2009-04-30 00:48) 

IsPhoto

がぁこさん
そうです、薩摩切子も素晴らしいんですよ。
機会あれば、ぜひどこかで見てみてください。きっと色合いのとりこになりますよ~^_^v
by IsPhoto (2009-05-01 00:36) 

rose-k

綺麗ですね~♪ガラスの器って大好きです!
切り込みといい色合いといいキラキラ感もあり、素敵だなぁ~(*^^*)
サントリー美術館、リンク見てきましたが、同じ写真が使われていますね!
もしかして IsPhoto さんが撮影されたものが使われているのでしょうか?
by rose-k (2009-05-05 23:21) 

IsPhoto

rose-k さん
薩摩切子、ほんとうに綺麗ですよ。機会あればぜひ一度ご覧になってください。
>もしかして IsPhoto さんが撮影されたものが使われているのでしょうか?
いえいえ、今回購入した作品カタログの表紙を撮影したので、同じ図柄になっただけです。紹介記事ということで、こういう形で使わせていただいています。
by IsPhoto (2009-05-06 23:29) 

sig

こんにちは。
江戸切子しか知りませんでした。とてもためになりました。
by sig (2009-05-28 13:24) 

IsPhoto

sigさん
ありがとうございます。
薩摩切子は美術工芸品として、海外へも輸出されていたようです。
そのため、デザイン、バランスなども、伝統的日本のデザインとは、また少し違った雰囲気のあるものです。記事を読んでいただいて、興味を持っていただけたら幸いです。
by IsPhoto (2009-05-30 10:12) 

kazz

私も薩摩切子は初めて知りました。
それにしてもガラス工芸品は光によってより美が強調されますね(^^)
もしや江戸、薩摩以外にも切子の伝統はあるのでしょうか?

by kazz (2009-06-05 15:45) 

IsPhoto

kazzさん
ほかにも**切子というのがあるらしいのですが、やはり有名なのは江戸と薩摩でしょうね。
江戸の方が薩摩より歴史は古いらしいのですが、薩摩はこっそり(?)海外とも通じていたこともあり、デザインが日本古来のものとは違う感じのものが多くあります。ワイングラスのような台付きグラスが多いのも特徴でしょうか。
by IsPhoto (2009-06-07 09:22) 

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