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幸せな生活 - 高齢者世帯 [欧州旅行2009]

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グルントヴィークス教会を見学した後は、すぐ近くにあるJさんのお母さんのお宅を訪問した。
今までお会いしたことはなかったが、今回我々がデンマークを訪れることを聞いて、ぜひ寄りなさいと言ってくれていた。
92歳と伺っていたので、お会いする前は正直お邪魔してよいものかどうか、かなり心配であった。
ベルを鳴らし、ドアが開いたその先にいた元気なおばあちゃんの姿を目にした瞬間、その心配は吹き飛んだ。普通ご高齢の方にお会いすると、お元気ですねという言葉が出てくるものだが、とても素敵な方という印象。
満面の笑顔で我々を招き入れてくれた。
 
 
お部屋の印象は、とてもすっきりしていて清潔。片付いているという一般的な形容でなく、驚くほど素敵なインテリアだった。部屋の各所におかれたレクリントの照明も印象的。

ダイニングへ向かう途中の部屋の一角にたくさん写真が飾ってある一角があった。古いデンマークの風景写真が多かったので興味深く見ていたら、彼女は一枚一枚説明してくれた。”これは、だいたい○○年くらいのコペンハーゲン....”など一生懸命説明してくれた最後に、”で、これが私のダンナ。かっこいいでしょ?”っておちゃめな笑顔を見せてくれた。(彼女の旦那様は、残念ながら10年前に他界されたとのこと。)

お会いする前のもう一つの懸念は、彼女とコミュニケーションがとれるのかということ。デンマーク語を話すこの国で、多くの人が英語を使えることを知っていたとは言え、ご年配の方はどうなのか想像がつかなかった。しかし彼女の英語はまったくもってしっかりとしたものだった。聞くと、”5年前に英語の勉強を始めたの。そうすると、色んなこと知ることができるからね。”とのこと。いやはや参りました。

ダイニングの席に着くと、”コーヒーがいいかしら?それとも紅茶?”と問いかける彼女。日本人の私たちはつい”おかまいなく”と言いそうになるが、精一杯お客様をおもてなししようとするその気持ちがうれしくて、遠慮なくいただくことにした。ほどなくして、コーヒーと、お手製のケーキがテーブルの上へと運ばれてきた。

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彼女は一人暮らしなのだそうだが、冒頭の写真の左の女性は彼女の元同僚で、長い間とても中のいい友人なのだそうだ。週に何日か彼女の家へやってきて、世話をしてくれているのだという。日本人の我々にとって、生活に手助けの必要な高齢者なら、子供家族と同居しないのか心配になるが、この国では子供が独り立ちしたら、別々に住むのが普通であるという。驚いた顔をして聞いていると、彼女たちは逆に我々のその感覚が”なぜ?”と疑問に感じたようだ。”子供に世話をかけたくないから?”というわけでも無いようだった。

デンマークでは、近年いわゆる”老人ホーム”のような施設の建設を中止し、可能な限り在宅でという政策をとっているとのこと。自宅で生活する高齢者というと、我々のイメージからは、つい”さびしいのではないだろうか?”とか、勝手な思い込みで考えがちだが、彼女の生活を垣間見たことで、自分が高齢になったときにどんな生き方をしていくか、失望より希望のようなものを感じることが出来た。

ところで、デンマークは、近年各国で発表された調査において、生活の幸福度という指標で常に上位にランクされている。

レイチェスター大学の調査
http://www2.le.ac.uk/ebulletin/news/press-releases/2000-2009/2006/07/nparticle.2006-07-28.2448323827

御存じのとおり、デンマークは税金も非常に高い(Jさんも、収入の6割近くを何らかの税金として支払っていると言っていた)が、昔からの友人であるJさんをはじめ、その友人や、以前通っていた現地の会社の人など色んな方に聞いても、このことに強い不満を持っている人は確かにいないようだ。
日本で同じことを実現するのは現実的ではないと思うが、彼女のお宅を訪問したことで、幸福を実現する一つのカタチとして、こういう方法論もあるのだと知ることができ、とても勉強になった。

彼女たちとの楽しい時間はあっと言う間に過ぎてしまい、名残惜しいが失礼することになったとき、彼女がおみやげをくれた。彼女の趣味は、こうして毛糸で人形を作り、みんなにあげることなのだそうだ。ウチの奥様だけでなく、私にもぜひ!というので、奥様がもらったのと色違いで頂くことにした。

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今回のお宅訪問では、とにかく彼女の旺盛な好奇心と、なんでもやろうとする気力に驚かされた。
玄関先で抱き合い、”また必ずお邪魔します”と御挨拶して、彼女の部屋を後にした。

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コメント 8

mari-go

88歳から英語の勉強されて、もう日常会話に不自由しないなんて!!
これはこれは、見習わないと^^
覚える単語より忘れる単語の数のほうが多くって
英語の勉強やめたくなりますが、そんな事ではダメですネ!!
ちょっとやる気が出てきました(*^_^*)
最後の毛糸のお人形、とってもかわいらしい♡
本当に素敵な女性ですネ
なんだか歳をとるのが楽しく思えるような
素敵な記事ありがとうございました♪
by mari-go (2010-02-17 23:47) 

えがみ

勉強に不可能はないということですね。
日本人は甘えすぎかもしれません、こと英語に関しては。

by えがみ (2010-02-18 00:53) 

IsPhoto

mari-goさん
あちらが日本より有利な点の一つとして、最近はかなり少なくなったようですが、日本に比べて英語のTV番組(デンマーク語字幕)が多いという点があげられると思います。
後でお会いした年配の男性は英語はあまり得意でなかったので、彼女の好奇心と勤勉さは際立っていると感じました。
年をとることに希望を感じさせてくれる素敵な方でした。

by IsPhoto (2010-02-18 19:13) 

IsPhoto

えがみさん
それでも英語を理解する日本人増えたんじゃないでしょうかね。
これからもっと増えるかも?
by IsPhoto (2010-02-18 19:15) 

Kimi

5年前から英語の勉強を始めたなんて!
なんて素敵な女性なんでしょう。
好奇心旺盛なんですね。
英語の勉強したいなとは思ってても、
英会話学校とかに行くのがイヤなので、放棄してます(汗)
デンマークでは老人ホームのような施設の建設をやめてるんですね。
とっても興味深いです。
そうすると、子ども夫婦と住まないということは、
病気をされて要介護状態になっている方は
病院ですべて面倒を見ているのでしょうか?
日本だと老人介護施設が足りなくて、在宅で見るしかなくなり、
すべてを抱え込んでしまって痛ましい事件に発展したりしてますよね。
デンマークの例を参考にして、
そういった問題が解決されていくといいのになって思いました。
(義母が自宅で寝たきりなので、なんだか人ごとではなくて…)
税金が増えてもかまわないので、
みんなが幸せに安心して暮らせる社会にしてほしいですね。
by Kimi (2010-02-19 00:40) 

IsPhoto

Kimiさん
いわゆる特養のような施設建設が中止ということらしいです。
もちろん介護の必要な方は、そういった施設に入られるようですが、基本自宅でという方針みたいです。また、要介護者を援助する方への支援仕組みが色々と出来ているようです。
今回の訪問では、こういった福祉の詳しい仕組みについては聞けませんでしたが、会う方みんな、”老後の心配は基本的にない”と言っていました。
もっと調べてみたくなり、”デンマーク 福祉”等で検索してみると、色んな方が研修に行かれて、その報告をUpされているようです。
これらを読みながら、疑問点がある度に、Jさんに質問のメールをして徐々に理解を深めています。
デンマークのこれらの方法をそのまま日本に取り入れることは難しいでしょうし、人口も出生率も違うデンマークの方法がベストであるとも思ってはいませんが、高福祉&高負担という日本とは全然違ったスタイルを垣間見ることで、今後を考える上で、非常に参考になりました。

ウチは海外旅行のことを、”社会科見学”って言っていますが、その理由はいつもこうして何らかのちょっとだけお勉強(?)をする、こんな旅程にあります^^
by IsPhoto (2010-02-21 17:14) 

hieroh66

Isphotoさん 初めまして カキコさせて戴きます

コペンハーゲン懐かしいですね!
高校時代に文通してた事を思い出しました
by hieroh66 (2010-03-01 20:22) 

IsPhoto

hieroh66 さん
コメントありがとうございます。
文通されていたのですね。
コペンハーゲン記事他にUpしていますので、お時間ありましたらぜひどうぞ。

by IsPhoto (2010-03-02 01:01) 

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