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光は雲の上に... [オーロラ撮影]

イエローナイフへ到着初日。
 オーロラ観測は前に経験しているとは言え、はやる気持ちはやはり抑えきれず、半ば興奮気味に機材の準備をしていざ外へ出てみると、空一面の雲だった。ほどなくしてオーロラ観測地へのバスがやってきた。
 今日のバスは我々のパーティのみの貸切状態。わずか45分だが、移動中も皆あっという間に眠りをむさぼり始めた。日本を出発してかれこれ23時間も経過しているのだから無理も無い。途中機内で比較的眠れた私は、カメラバックの中に入れておいたラジオを取り出し、地元のFMから流れる音楽を聴きながら、観測地のオーロラワールドへ向かった。周りの皆は静かに寝息を立てていた。

080303-YK-AW-1.jpg 
 到着してみても、雲は完全に空を覆っていて、あたりは漆黒の闇である。目が慣れるまでにかなりの時間を要した。
 今日我々が利用させていただくドームは、これまた我々のグループで貸切である。中は折りたたみ椅子と長机が並び、さながら集会所といった風情。第一印象は、お世辞にも居心地のいい空間とは思えなかったが、大きなストーブがあり、インスタントではあるがコーヒーを入れて飲むことができる。オーロラが出るまでの待機中に暖を取れるということは、これほどまでにありがたいことかと後で思い知らされた。中は思いの外広く、我々10名にとって、機材の準備をするのに十分すぎるほどであった。パンとスープだけではあるが、夜半過ぎには、オーロラワールドのスタッフが夜食を準備してくれる。ひどく空腹になる訳では無いが、この時間にちょっとでも食べると、非常に落ち着いた。なにせ、夜のオーロラ観測のために、起きるのは昼前である。夜食がちょっとした夕食のような感じだからだ。

 長旅の後で疲れているはずだが、思ったほど眠さを感じない。なぜだろうと思いながら機材を準備していると、あることに気がついた。我々はここイエローナイフで、日本時間とほぼ同じ生活リズムで寝起きしているのだ。
 時差は18時間。昼に起きるのは日本時間の朝6時。オーロラ観測を終えてホテルに戻り、シャワーを浴びて明け方床につくのは、日本時間の夜11時といった具合だ。これにはちょっと驚いた。イエローナイフでオーロラを見ることは、経度方向へ移動する海外旅行であるにも関わらず、移動中にうまく睡眠をとれば、時差ぼけをあまり感じないのかもしれない。

 肝心のオーロラであるが、空は厚い雲に覆われたまま、時間だけが過ぎて行った。ドーム内で写真談義に花を咲かせつつも、打ち合わせた訳でもないのに、まるで決められたスケジュールどおりに監視するかのごとく、それぞれが交代で表へ出て、空を眺めた。
 そうこうしているうちに、一人が雲の色が変わり始めたとドームの中に知らせて来た。皆期待はしていないものの、いそいそと準備して表へ出てみると、先ほどまで真っ暗だった雪面が、ほのかに緑色に染まっている。しばらく様々な方向の空を眺めていると、空いっぱいの雲のほとんどが、緑色に染まり始めた。
 
 雲の上で本格的にオーロラが舞い始めたのだ。

080301-YK-AW-1.jpg

 その光景は写真の通り。あまりにあたりが緑に明るくなっていることから、この雲の上で、壮大な光のショーが繰り広げられているであろうことは容易に想像できた。しかし、それも雲の上である。我々には見ることができない。日本からアメリカ北東部へフライトの途中、ここイエローナイフ上空をこの時間に通過していく旅客機の周りには、素晴らしいオーロラが降り注いでいたことだろう。ただ、乗客は皆夢の中か....そんなことを想像しながら、空の雲を見上げた。ほどなくして、緑色の世界は終わりを告げ、あたりはまた元の暗闇が支配する森と変わった。

 その後はまったく雲も切れる気配がなく、あっという間にホテルへ戻る時間が来てしまった。ここオーロラワールドでは、午前2時がオーロラ観測の終了である。ここからあと2時間、午前4時までの延長をすることも出来るが、これには40ドルの追加料金が発生する。皆で話し合った結果、初日であるし、疲れてもいるだろうということで、今日はおとなしく帰ることにした。

 バスに乗り、10分も走らぬうち、誰かが”雲が晴れてきてない?”と皆に問いかけた。ほどなくして遠くの方から、弱い光が見え始めた。それは確かにオーロラだった。我々はバスの窓の内側についた氷を急いでガリガリと削り、窓に張り付くようにして、この旅で初めて現れたオーロラを夢中で眺めた。カーテンをゆらゆらと振るわせるように、オーロラはどんどん我々の方へと近づいて来て、とうとう頭上近くまでやってきたが、残念ながら途中で止まるわけには行かない。ハイウェイの上であり、大型トラックの往来も激しいので、バスを止めることはあまりに危険だ。ここでは走るバスの中から見るしかないのだ。

 ホテルに到着しても、わずかではあったが、オーロラは我々の頭上に姿を残していた。それも5分と経たぬうちに消え去ってしまった。

 部屋に戻ってからは、同室の方と、明日からの撮影をどのようにするか、機材はどうセッティングするか、話は尽きなかったが、明け方近くなってから、床に就いた。

<つづく>

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コメント 8

Kimi

日本時間と同じリズムで寝起き出来るってなんか意外ですね〜。
時差ボケにならなくてかえってよかったですね(^^)
雲がほんのりグリーンに染まってくるなんて、ドキドキしますねぇ〜(・∀・)
見てみたい度数がまた高まってきました(汗)
by Kimi (2008-07-02 22:11) 

IsPhoto

Kimiさん
地理的な時差と、オーロラ見物の時差が相殺されるとは予想外でしたね。
私は時差ぼけは比較的すぐに解消するタイプなのですが、初めての海外旅行だった他の人も時差ぼけになっていなかったし....ま、あれだけのものが見れる状況下では、時差ぼけなんかになっていられない...ってのもあったんでしょうが。
次はオーロラ写真も合わせて載せていきますので、見てみたい度数をもっと上げていただければ幸いです。^^

by IsPhoto (2008-07-03 00:10) 

りすあす

私も一度でいいからオーロラ見に行きたいなぁ~。
一度、計画がでていたのですが、寒いのが苦手な夫が、身動きがとれないかも・・・と言いだし(笑)、そのまま話が流れました・・・。
オーロラの写真、楽しみにしています♪
ブログにコメントありがとうございました!
すごく嬉しかったです♪
by りすあす (2008-07-10 14:12) 

IsPhoto

りすあすさん
こんばんは、ごぶさたしておりました。
だんなさまは寒いの苦手ですか....^^
私も南の出身ですから、寒いのは負けないくらい(?)苦手です。
が、次々と現れるオーロラを仰ぎ見ていると、興奮で体の中から温まりますので、平気でした。^^

あっくんおおきくなりましたね^^
あんなにちっちゃくても、しっかり電車好きなところが、すごく身近な(?)感じがして、かわいかったです^^v
先日は甥っ子(5才)の家に行き、私の方が真剣になるくらい、この子とプラレールで遊んでしまいましたし....^^;
by IsPhoto (2008-07-11 00:15) 

mee

「オーロラを見たいっ!」という、ただ安易な考えでいた私・・・。
こういう状況を踏まえて、オーロラへの思いを積もらせながら待っているんですね。
大変な中にも、すごく素敵な時間を過ごされてるのがいいと思います。
オーロラ。。。絶対私も見てみたいっ!待っていますっ!
by mee (2008-07-31 12:11) 

やまちん

オーロラの撮影は、いつかは自分もと思ってはいたのですが・・・。連載内容は想像を絶したもの、いや~、なかなか容易じゃないゾと思いました。写真雑誌のオーロラ特集でもここまで詳細には書かれてませんから、とても参考になりました。
引き込まれるように一気に読ませていただきました。つづきお待ちしてます♪
by やまちん (2008-08-02 19:57) 

IsPhoto

meeさん
コメントありがとうございます。
フィンランドの時もそうでしたが、なかなか出ない時は、みんなで暖をとりながら、色んな話に花を咲かせて...さながら修学旅行で寝惜しい時のような、なんだかわくわくした雰囲気の中で待っています。
オーロラは自然現象ですから、出なくてもしょうがないと言った感じで待つくらいの方が、気楽かもしれません。
ぜひ見てみてください!

by IsPhoto (2008-08-03 23:23) 

IsPhoto

やまちんさん
コメントありがとうございます。
今回デジタルは初めてだったので、撮れないで帰ってきてしまうのでは?とかなり心配でしたが、同行させていただいた先輩方のアドバイスもあって、なんとか撮ることが出来ました。確かにおっしゃるとおり、写真雑誌等では、撮影方法などについて、あまり詳しく書かれたものが無いようなので、私なりの撮影方法を記録に残しておこうと始めたブログです。もちろんどんな条件でもカバーできるものでは無いと思いますので、必ず写るとは言えません。
ただ、言えることは、しっかりと準備しておけば、デジタルなら意外とよく写ってくれるということです。銀塩の時よりずっと良かったです。
ぜひ挑戦してみてください!
by IsPhoto (2008-08-03 23:29) 

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