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静かに訪れた光 [オーロラ撮影]

オーロラ観測地へ到着して空を見上げると、昨日と明らかに違うことに気がついた。雲が一つも無く、まさに”星が降る”という表現がぴったりの、そんな空だった。予報では、今日の最低気温は-39℃。これは期待できそうだ。

ドームへ入り、皆さっそく準備に取りかかった。

まだオーロラの出る気配は無く、念入りにセットアップを行った後は、旅行談義や写真談義で盛り上がりつつ、昨日と同様、交代で空の監視を行った。

23時頃、外に出ていたリーダー(我々は「先生」とお呼びしている)が、”そろそろかも知れませんね。”と言いながらドームへ戻ってきた。カメラのセットアップを終えて準備万端の三脚を抱え外へと出ると、頬に冷気が刺さった。
ほどなくして、非常に薄いものの、確かにオーロラはその姿を現し始めた。

080301-YKAW-1.jpg
まずは北西の方向から、うっすらと光がの筋が幾重にも伸びてくるのがわかった。上の写真が、今回の撮影紀行で一枚目のカットだ。
初めてのオーロラデジタル撮影であるため、当然露出時間は見当もつかない。非常に弱い光に思えたので、ISO3200で35秒とかなり長めの露出を与えた。しかし、それでも1段ほどオーバーだったようだ。RAWで撮っていたので、この写真は現像段階でかなりマイナス補正を加え、我々の前に初めて現れたあの弱い光を、可能な限り目で見たそのままになるように再現してみた。デジタルカメラの感度は予想以上に良さそうだ。

この光は大きく弧を描き、東へと伸びる気配を見せていたので、東側に広がる湖を見渡せる丘へと撮影ポイントを移動した。徒歩2分程度である。

080301-YKAW-2.jpg

まだ薄いその光に向けて何度かシャッターを切るうちに、光は湖の上で徐々に確かなカーテンとなっていった。肉眼では見えなかった赤い色が、遠くのカーテンの上に確かに写っていたと、後で現像してみて初めて解ったのがこのカットである。

このような弱い光が現れては消えを繰り返すうち、その一つが突然動きの早さを増した。
リーダーと、”これは来るね!”と興奮気味に言葉を交わしているうちに、あっと言う間に頭上で大ブレーク。あたりからは歓声が沸き起こった。私はというと、その驚きと感動にシャッターを押すことを忘れ、天頂で繰り広げられるその壮大な舞台を、ただひたすら見上げていた。

大ブレークした強い光が去り行くところで我に返り、シャッターを押したのが次の写真である。
写真の真ん中より少し右下部分に、縦スジが見えるところがあるが、この部分が我々の頭上で華麗に舞った後、徐々に遠ざかっていった光の中心である。

080302-YKAW-3.jpg

その後光は落ち着きを見せ、星空だけが頭上にはあった。この星空だけでも、眺めていてまったく飽きないほど美しい光景であった。
撮影が一段落して、リーダーのカメラのスクリーンを見せてもらうと、なんと大ブレークの瞬間を見事に捕らえた映像がそこにあった。
色は確かにピンク色。細い針が頭上から降り注いでいた。まさにオーロラ爆発。
ISO3200、2秒の露出だったという。ブレーク時の露出の目安と、ブレークする直前には素早くノイズ低減機能をOFFにするというヒントを頂いた。

ブレーク時のオーロラは、嵐が吹き荒れてあっという間に去っていくそれに近い感覚である。どんどんシャッターを切らなければ、瞬く間に過ぎ去っていく光を的確に収めることは出来ない。そんな時、撮影後に露出時間と同等の時間をかけてノイズリダクションが行われる間は、当然次のカットが切れない。これがブレーク時にノイズ低減機能をOFFにする理由だ。ノイズが出て汚い画像になってしまわないか心配になるところであるが、ブレーク時は驚くほどの光量なため露出は数秒のレベルであり、ノイズリダクションを行わなくとも十分である。

ブレーク時に限らず、オーロラは見た目で光の量を測ることが非常に難しいため、この条件で撮れば必ず綺麗に写るという法則を得るのはなかなか難しい。そのため、光の状態に合わせて都度迅速に判断して露出を決めなければならない。オーロラの撮影はもっとのんびりしたものだというイメージがあるが、実は非常に慌しく、時間との戦いだ。

この大ブレークのあと興奮冷めやらぬ中、我先にと10名全員が迷わず今日の延長を申し出たのだった。あんなにすごい大爆発を見たのだから、無理も無いが....
(ここオーロラワールドは、2時までが基本だが、追加料金($40)を払うと、その後4時まで2時間延長することが出来る。)

しかしそれからしばらく、光は姿を現すことなく、静かな星たちが空を覆っていた。我々は交代で監視しながら、ドームの中で夜食のバッファローのスープを頂き、コーヒーを飲みながら、また撮影談義に花を咲かせていた。深夜2時、延長されなかった方々を見送りながら空を見上げて、「今日はもう無いかな....」と思いかけたその頃、遠くの空にわずかな光を見つけた。皆に知らせると、あっという間にドームから飛び出て思い思いの撮影ポイントへと散っていった。
しかしまだ弱い。ISO3200でも30秒を超えないと写らないレベルだった。
しかしその後、非常にゆっくりではあったものの、光はその強さを確実に増して、再び我々の頭上へとやってきたのである。

080302-YKAW-4.jpg

0時頃の激しいオーロラではなく、非常にゆっくりとした動きで、柔らかい輪郭のオーロラであった。

080302-YKAW-5.jpg

それでも光はとても長い時間舞い続け、3時頃には小爆発とも言えるブレークを見せた後、鮮やかな色彩の光を見せて、まるで最後の炎が消え落ちるように、我々の前から去っていった。

080302-YKAW-6.jpg

昨日の雲に阻まれたオーロラと違い、非常に良いコンディションでオーロラを堪能した我々は、バスの中で心地よい眠りにつきながら、ホテルへと戻った。

<つづく>

本記事は、私がオーロラ撮影において個人的に試した方法を紹介したものであり、オーロラ撮影及び低温下での撮影の、全てのシチュエーションをカバーできるものであるとは限りません。また、機材故障や怪我等を引き起こすなどのリスクもあります。本記事において紹介させて頂きました方法を試みた場合に発生するいかなる損害も、当方では責任を負いかねます。誠に申し訳ございませんが、あらかじめ、ご了承ください。

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コメント 8

Kimi

バッファローのスープが気になります…(笑)
撮影は時間との戦いだったんですね。
ノイズリダクションの時間すらもったいないのですね(ふむふむ)
どのお写真もデジタルで初めてとは思えないくらい、きれいです!!
さすがですね(^^)
それにしてもオーロラって、光りの洪水のような…光りの霧ような…
言葉では表せない美しさですね♪
シャッターを切るのを忘れて釘付けになっちゃいますねっ(・∀・)
by Kimi (2008-09-07 01:52) 

りすあす

すごく綺麗!!オーロラってやっぱり素敵だな~。
光のカーテンのユラユラ感がいいですね~。
うっとりしました。
by りすあす (2008-09-08 01:43) 

IsPhoto

Kimiさん
バッファローのスープはですねぇ。まぁ、私は問題なしでしたが、獣系の匂いに弱い人、例えばラムを食べれない人にはオススメしませんねぇ^^;
ラムよりずっと獣系の香りいっぱいでした。^^
オーロラって、強いときは予想以上に早く動きますので、けっこうてきぱきと撮影を進めないと、なかなかいいカットが撮れないもんだと、今回実感しました。
この日は全体に弱い光があって、ところどころ強い光で...といった感じで、ぼんやりとしていました。翌日以降の記事で、また違ったオーロラをお見せできると思いますので、ご期待を....

ところで、昨日は残念でしたねぇ。実は途中見ていないので、詳しいレポートお待ちしています^^(と、プレッシャーかけたりして ^^; )
最近はスカパーが見れなくなったので、もっぱら地デジで見ていますが、深夜にもかかわらず、”つるっ!”といった瞬間、”あ゛~!”ってでかい声で叫んでしまいました。
by IsPhoto (2008-09-08 20:02) 

IsPhoto

りすあすさん
この光に見せられて、何度も何度も彼の地へ足を運ぶ方がいるくらいですからねぇ。見た人で、感動しなかったという方はいないのでは?と思います。日本人だけがオーロラに感動しているのかと思っていたのですが、その後の私のリサーチ(?)では、海外の方にも熱狂的ファンがいらっしゃるようです。^^
by IsPhoto (2008-09-08 20:05) 

ccq

こればっかりはいかなきゃ見れませんな....
by ccq (2008-09-08 23:07) 

Kimi

ラムあんまり好きじゃないのでダメかも…(汗)

ショックで詳しいレポートどころではありませんでした(・_・、)
今から書き直そうかしら(;^_^A アセアセ…
私も声にならない声を叫びましたよ・・・_| ̄|○
今日一日、思い出し泣きばかりしていました。
by Kimi (2008-09-09 01:54) 

IsPhoto

ccqさん
確かに....^^;

by IsPhoto (2008-09-10 22:39) 

IsPhoto

Kimiさん
ラムとはまたちょっと違うと言えば違うのですが、獣系の匂いがしました。
我々のパーティー10人中の2人は、一口味見したあとは、食べませんでした。^^;

by IsPhoto (2008-09-10 22:40) 

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