SSブログ

大和田良 写真展 - FORM [写真]

110907-FORM-1.jpg


大和田良氏の写真展、FORMのオープニングに伺った。
 ギャラリーに到着すると、既にたくさんの人が集まっていた。

110907-FORM-2.jpg

 
110907-FORM-3.jpg

 
彼のFORMシリーズは、盆栽を「対象」として捉えた作品なのだが、それまで、こと盆栽に関してはほとんど興味が無かったので、最初はそれら作品について正直興味を感じなかったのも事実。
大宮の盆栽美術館で彼のこの新作の展示が決まった時も、私の住むところからかなり遠いその場所へ足を運ぶのは、とても大変なことのように思われたので、また改めて見る機会はあるだろうぐらいに考えていたのも正直な気持ちだった。

ある時彼に会った時、今回の作品が生まれる経緯を聞いて興味の度合いが高まったのだが、さらに今回撮影した盆栽は、この美術館に展示されているもので、「ほんもの」であると強調していた。
彼はいつも「ほんもの」、「いいもの」を見るのは大切だと語っている。その考えには大変に共感させられるところがあるので、「ほんものを見に来ませんか」という彼の言葉に背中を押される形で大宮へと足を運んでみた。

そこで出会った盆栽の数々は、それまで自分が盆栽に対して持っていたイメージをはるかに超えるものであった。動きを感じるかのような枝ぶりもさることながら、枝と鉢、そしてそれらの間に存在する空間の美しさに見とれてしまいながら、今までどうしてこれほどまでに素晴らしいものに興味を持たなかったのか、不思議なくらいだった。これも彼の言う、「ほんもの」の力なのであろう。

そして、その驚き冷めやらぬまま、いよいよ作品が展示されている会場に入った。
これらの素晴らしい作品をどうやって表現しているのか、大変興味深いところであったが、それは予想もしなかった手法で表現されていて、大変な驚きを持って作品を拝見したのだった。

今回の彼の作品は、日本的な表現を目指して作成されたものだとのこと。そう言ってしまえば、至極簡単なようにも思えるが、桜や富士、寺社の類をテーマに選んだものは既にたくさんある。だからこそ彼はその中でも日本画に注目し、その空間やデフォルメ、サイズ、校正、画材、画風のありとあらゆる構成要素を深く調べたのだと言う。

調査の過程で俵屋宗達と尾形光琳の風神雷神の描き方の違いに注目してみたり、光琳の燕子花屏風も何度も見たのだと言う。
燕子花に関しては、これの写真も撮りに行ってみるも、光琳のその表現に比べて、「あんな風には絶対ならなかった...」と笑って話していた。

そして、写真作品として他にあまり見かけない...というよりほとんど無かった「松」に注目。しかし、屋外の松を様々撮ってみたが、満足のいく結果は得られなかったらしい。
そこで、盆栽はどうだろうか?と考え、まずは勉強するよりも、盆栽作家に話を聞いてみて、それから調べる、勉強してみるという手法をとったのだと言う。
このあたりの行動と決断が、とても彼らしいところでもある。

調べた盆栽作家に電話でアプローチしたが、怪しまれたりするケースもあったようだが、その後3人にコンタクトが出来、彼らへのヒアリングの中で、「いい盆栽とは」という問いかけに対し、ある一定の型があることに気がつき、さらにそれはそれは思ったよりも「ぶれが無い」ものだったのだそうだ。そんなことからも、やはりいいものを見ていいものを撮る必要があると感じたのだと言う。

110907-FORM-4.jpg


実際の撮影手法については、パンフォーカスにしてみたり、アウトフォーカス(「こちらの方がより見る側の想像力が働くかな?と思ったりして試した。」のだそうだ)にしてみたり、一つの被写体の中で色々な実験をしたそうだ。そして、それらを最終的な作品に仕上げる際の画面構成については、屏風の形態である二曲一双の形を取ることなどを意識したのだと言う。また、枝ぶりのフォルムを表現するために、アンダーで撮ったり、視点が違う写真をそれぞれ合成し、ひとつの盆栽を様々なアングルで見せるなどの独自の手法を用いている。撮影された環境、特に光に関して聞いてみたところ、自然の光を使って撮影しているのだと言う。また、当初フィルムで撮っていたが、フィルムでは生々しすぎた感があった。しかしデジタルで撮ることで、乾いた感じをだすことが出来たとも言っていた。


彼のFORMシリーズは、”風景美を盛り込んだ鉢植え”という盆栽の定義をさらに超えるかのような、独自の視点で表現されている。
今まで見た盆栽の写真、写真集等は、背景も白またはグレイ等の単一トーンで構成され、いわゆる盆栽のカタログとなっているものだった。しかし彼の作品は、背景に屏風を意識したかのような金箔の輝きをしたたえていて、それだけでも独特の雰囲気と、日本的な表現を目指すという方向性そのままに、幽玄な趣さえ感じさせるものだった。
この作品が出来るまでの過程での調査、研究はなみなみならぬ苦労があったであろうことは容易に想像出来るが、いつも彼の作品づくりには、こうした緻密で地道な調査、研究の上に成り立っているようだ。

110907-FORM-5.jpg


大宮の盆栽美術館での展示を終え、今度は都内でその作品の展示が始まったわけだが、その一つがここEMON PHOTO GALLERYだ。

ひとしきり作品を拝見し、しばしお話を伺う。既に作品についての話はかなり聞いているので、最近の日常の話など...。いつもながらに驚かされる話の数々に、やはりこの人はただならぬ人だと改めて思う。


大和田良 FORM

EMON PHOTO GARRELY ( http://www.emoninc.com/ )
2011.9.7(水)~2011.10.7(金)
平日11:00~19:00、土曜日11:00~18:00
Close 日曜・祝日

B GALLERY ( http://www.beams.co.jp/b-gallery/ )
2011.9.7(水)〜2011.10.3日(月)                
11:00~20:00 *会期中無休


110907-FORM-6.jpg


いつもは作家ご本人を作品の前で撮らせて頂くのだが、今回は一緒に撮って頂いた。
( 撮影 MI_GR_ 氏)

nice!(10)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 10

コメント 4

ぱぱくま

良いものがあっても興味が湧かないとなかなか
その良さに気付かない事ってありますよね。
こうした世界にグイグイと惹きつけるきっかけを
与えられる人、プラスの影響力を広げていけるって
ホントにすごいと思います。
by ぱぱくま (2011-09-28 23:35) 

MI_GR_

楽しかったですね〜^^
そして明日もどこかでお会いしそうな予感が。。。
by MI_GR_ (2011-09-29 01:47) 

IsPhoto

ぱぱくまさん
コメントありがとうございます。
ほんと、いつも彼からは色んなことを学んでいます。
すごい人ですよ。写真展にもぜひどうぞ!

by IsPhoto (2011-10-02 12:08) 

IsPhoto

MI_GR_さん
楽しかったですねぇ。なんか、三国志でもりあがってましたね。
またWorkshopとかにも来てくださいね。そうしないと師匠に除名されちゃうかも(笑)
by IsPhoto (2011-10-02 12:10) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。